地経学とは何か (文春新書)

地経学とは何か (文春新書) の詳細

「はじめに」で、著者は国際秩序は基本的にアナーキーであるがゆえ、ひとたびほころびが出始めると一気に不安定となってしまい、それは徐々にそして突如崩壊すると述べている。実際、米中の貿易摩擦はすでに「戦略競争」の段階へと進んでいて、特に今中国は、米国の武力的優位を背景にした外交政策に晒されていることから、「地経学的大戦略」という戦争にいたる一歩手前の、ありとあらゆる手段を講じて米国の脅威に対抗しようとしているのだという。中国は米国との軍事力を比較した場合、劣勢なのは明らかで、それを避けるために経済戦争を仕掛けてきている。世界では今、国際経済と地政学と戦略が渾然一体となった、いわゆる「地経学」の時代へ突入したという。「地経学」とは「国家が地政学的な目的のため、経済を手段として使うこと」と定義づけている。金融制裁、AI、5G、仮想通貨やサイバーテロといった、経済を武器にした戦争が現在世界各地で繰り広げられている。そこから、もはや地政学だけでは解決できそうにもない課題に対処するために、経済を武器とする地経学の分析が急務とされていると著者は主張している。